■ゲラサ (〈ギ〉Gerasenos)
この地名は2つの異なる都市に関係している.
一つはトランス・ヨルダンにあり,ヨルダン川の東約30キロにあるデカポリスの一つゲラサ,現在のジェラシュで,もう一つはガリラヤ湖東岸の町ゲルゲサである.
福音書に出てくるのはこちらの町であろう.
ここでキリストは,墓場に住み悪霊につかれた男と会い,その男から悪霊を追い出した.
悪霊は代りに豚の群に入ったので,その豚の群は崖から湖に落ちておぼれ死んでしまった.
ゲラサという地名は聖書には見られず,「ガダラ人の地」(マタ8:28),または「ゲラサ人の地」(マコ5:1,ルカ8:26.ルカの方は異本では「ゲルゲサ人の地」)と呼ばれている.
豚の群がいたことは,ここが異邦人の地であったことを示している.
湖の東岸中央のやや北寄り,ワディ・サマクの滝口にケルサまたはゲルガと呼ばれる2つの町の廃墟がある.
ここの斜面は,一度下り始めたら途中で止ることができず,下の湖に飛び込んでしまうほど急で,豚の溺死も十分うなずける.
最初にこの場所が福音書の舞台であると提唱したのはW・M・トムソンである.
この付近には,岩壁を横に掘って作った墓や,石器時代の卓石の遺物が見られる.一方,現代のゲラサつまりジェラシュの旧跡は,ヨルダンの西方のどの地よりもよく保存されている.
そこにはいくつかの壮麗な神殿,劇場,バジリカ,宮殿,浴場,競技場などがある.
町の南に続く凱旋門はほとんどそのまま残っている.
対の列柱がある舗装された大通りが直角に町の中を走り,交差点には4つのがっしりした柱の台座がある.
またこのあたりには,数え切れないほどの良質の泉が現存しているところから見ても,相当の人口を有する居住地として,かなり昔から栄えた所であると推測される.