シモン

■シモン 

1.(〈ヘ〉simon) ユダの子孫の一人(Ⅰ歴4:20).

2.(〈ギ〉Simon) 「神は聞かれた」という意味.シメオンという旧約の名前の後代の短縮形.

(1)シモン・ペテロ.

イエスの十二弟子の第一人者,使徒ペテロの本来の名.

ヨナ(ヨハネ)の子で,アンデレの兄弟(マタ4:18,16:17,ヨハ1:40,42,21:15‐17).

「岩」を意味するペテロという名は,後でイエスがつけたものである(マタ16:18,ヨハ1:42).

(2)主の兄弟シモン.

マタ13:55ではヤコブ,ヨセフに次いで3番目に,マコ6:3ではヤコブ,ヨセ,ユダに次いで4番目にその名があげられている.

(3)イスカリオテ・ユダの父.イスカリオテ・シモンとも呼ばれている(ヨハ6:71,13:2,26).

(4)熱心党員シモン(ルカ6:15,使1:13).

十二使徒の一人.

マタ10:4とマコ3:18の並行箇所では〈ギ〉カナナイオスとあるが,これは「カナンの住人」という意味ではなく,後に「熱心党」と呼ばれた党派の呼称であったと思われる.

シモンが熱心党であるということについて,政治的な意味においてか,それとも宗教的な意味においてか,意見が分れている.

(5)らい病人シモン.

ベタニヤの彼の家で食卓についていたイエスに,一人の女が高価なナルドの油を注ぎかけたという記事がマタ26:6以下とマコ14:3以下にある.

この出来事とヨハ12:1以下の油注ぎの出来事が同じものなら,油を注いだのはマリヤであり,シモンは,ラザロ,マルタ,マリヤの親戚か親しい友人ということになる.

(6)パリサイ人シモン.

イエスを招き共に食卓に着いていた時,一人の罪深い女が来てイエスに香油を塗った.

その時彼が心に抱いた否定的な思いを,イエスに見抜かれてしまった(ルカ7:36以下).

上記(5)のらい病人シモンの家での油注ぎと同一視する者もいるが,詳細において大きく異なる2つの記事を重複記事とすることには無理があろう.

(7)クレネ人シモン.

マコ15:21によれば,アレキサンデルとルポスの父.

彼はイエスの十字架を無理に背負わせられた(マタ27:32,ルカ23:26).

もし,このシモンがアンテオケ教会の指導者の一人「ニゲルと呼ばれるシメオン」であり(使13:1),ロマ16:13のルポスがシモンの子ルポスであるなら,同じ箇所でパウロが「彼(ルポス)と私との母によろしく」と述べていることが容易に理解できる.

というのも,アンテオケでパウロはクレネ人シモンと息子ルポスの家に泊って世話になったという推測ができるからである.

(8)魔術師シモン.

彼の魔術にサマリヤの人々は驚嘆し,「この人こそ,大能と呼ばれる,神の力だ」と言っていたが,ピリポの伝道によって,バプテスマを受けた.

ところが,ペテロとヨハネによって人々に聖霊の賜物が与えられるのを見たシモンは,聖霊を授ける権威を金で買おうとし,ペテロにきびしく断罪された(使8:9‐24).

伝説によれば,彼はグノーシス主義の発生にかかわったと言われる.

(9)ヨッパの皮なめしのシモン.

ペテロに宿を提供した信徒である(使9:43,10:6,17).