そうとく 総督

■そうとく 総督 

(1)〈ヘ〉〈ア〉ペハー.

軍略に秀でた指揮官(commander)としての総督に用いられている(Ⅰ列10:15,20:24,Ⅱ列18:24,Ⅱ歴9:14,イザ36:9,エゼ23:6,12,23).

バビロニヤやペルシヤ,メディヤの各州を治めている者(エス3:12,ダニ3:2),特に属州ユダヤの行政長官としての総督を指す場合に用いられている(エズ8:36,ネヘ2:7,9,3:7,5:14‐15,18,12:26,ハガ1:1,14,2:2,21,マラ1:8).

(2)〈ヘ〉ティルシャーサー.

回数は多くはないが「総督」と訳される(エズ2:63,ネヘ7:65,69,8:9,10:1).

(3)ローマ帝国治下における総督.

a.帝国内の治安の不安定な地域(このような属州は皇帝領とされた)に皇帝が直接派遣したもの.

ユダヤは,ヘロデ大王の子供の一人,アケラオの失政により,紀元6年ローマの属州に組み込まれ,総督がおかれた.

総督はたいてい,元老院の議員階級から選ばれたが,ユダヤ州の総督は1ランク低く,隣接の属州シリヤの総督の監督下にあり,このような小属州の総督は,大属州の場合とは異なって騎士階級の中から選ばれた.

しかし,彼は「剣の権」すなわち刑事裁判の全権を握っていた.

ユダヤ州の総督は,コポニウス,アンビブルス,アニウス・ルフス,ヴァレリウス・グラトゥスと続き,主イエスの裁判に関与したポンテオ・ピラトは皇帝テベリオにより第5代目のユダヤ州総督として任命された(マタ27:2‐27,28:14,ルカ3:1,20:20).

ピラトの後任はマルケルス,次はマルルスであった.

このマルルスの在任期間中,行政権は一時,国主ヘロデ・アグリッパ1世(使12:1‐23)にゆだねられた.

しかし,行政権は,紀元44年に再びマルルスに戻された.

その後,クスピウス・ファドゥスが皇帝クラウディウスによって任命され,ティベリウス・アレクサンドロス,ヴェンティディウス・クマヌスと続き,さらに,ペリクス(使23:24,26,33,24:1,10)がクラウディウス帝によって,続いてポルキオ・フェスト(使24:27)が皇帝ネロによって任命された.

このペリクスとフェストは,ユダヤ人のために捕えられたパウロの裁判に立ち会っている.

フェストの死後,アルビヌスが任命され,ネロの統治の12年頃,ゲッシウス・フロルスが任命された.

以上がシリヤ総督の監督下にあったユダヤ州の総督であるが,彼らはユダヤ州において,軍事,行政,経済に最高の権威を持っていた(ヨハ18:31,19:10).

b.地方総督.

ローマによく帰順した属州(このような属州は元老院に所属した)の総督を指す.

聖書には,セルギオ・パウロ(使13:7‐12),ガリオ(使18:12),エペソ駐在のアジヤ属州の地方総督(使19:38)らが記されている.

この地方総督の任期は1年であった.